Melt
「どうして九十九は、いつも私を困らせるの!?どうして放っておいてくれないの!?」
そう言って俺を見つめる初音の眼はとても強いくて、とても脆い気がして。
「お願いだから、私の傷に触らないで。もうこの傷だけが、痛みだけが、私と縁を繋いでいるものだから。楽になんて、ならなくていい。」
あぁ、と思った。
俺はずっと初音の中で恋人は生きていて、大切に大切に思っているから辛いんだと思っていた。
大切に思う事は良いことだけど、あまり気負わないでほしいと思っていた。
けど、違う。
初音の心の中で彼は生きていないんだ。
だから痛みしか繋がりを感じない。
きっと、生きていないわけじゃないのに。