GOLDEN WOLF〜ヤン暴君と最強honey〜
煌月……ほんと羨ましいよ。
土下座が出来る程、兄さんが好きなんでしょ?
私もそんな兄さんが欲しかった。
私はフッと一瞬笑みを浮かべた後、サラリと髪を耳にかけて小声で言った。
「もし、『犬は好きか?』って“アイツ”に聞かれたら、絶対に好きだって答えて」
「オイ、“アイツ”って誰だ!」
「“アイツ”の前で、私の名前は出さないでね」
「だから、」
「海に沈められるよ?」
「“アイツ”って、」
「きっと、元日前には地元に帰ってくると思うから」
「誰だよ」
「くれぐれも、東区界隈全域を仕切っている『蒼柏』には気をつけてね」
「蒼柏……だと?」
「そう。元暴走族『蒼柏』八代目総長、木ノ本龍夜。私の兄である“アイツ”に半殺しされないでね」
「あ、兄貴!?」
「私、またねとは言わないから」
「……茉麗?」
「そんじゃ、達者でね」
困惑している煌月を一人この部屋に置いて、踵を返す。