GOLDEN WOLF〜ヤン暴君と最強honey〜
「……あのさ。五年前の話を兄貴から聞いたんだけどさ」
「……うん」
「あの時はすまなかったって、兄貴が言っていた」
「うん、もう大丈夫だから」
「……そうか」
「うん」
「……俺が戻ってくるまで、姫輝に遊んでもらえ」
「そうすることにするよ」
「んじゃ、行ってくるわ。無傷で帰ってきてやる」
煌月は口元に笑みを作ったまま、バーを後にした。
そして、戸が閉まった音が耳に入った途端、再び私の目から涙が零れ落ちる。
「……あれ?姫輝、涙が止めどなく流れちゃう」
「……茉麗ちゃん」
「おかしいよね?こうなることを私が一番願っていたのにね」
「……」
「兄妹って、こんな脆い関係なの?」
「ねー、茉麗ちゃん」
「……何?」
「茉麗ちゃんが大好きだった頃の兄貴の話を聞かせて?」
姫輝は、私の左手をそっと包む。
私は涙ながらに、五年前の過去話を語った。