GOLDEN WOLF〜ヤン暴君と最強honey〜
けど、全く救われていなかった。
次の瞬間、私は目を見開いたよ。
あの優しい兄さんが人を……ソラさんに殴りつけていた。
あの時の兄さんの目は忘れられない。
血眼……ソラさんを今にも殺しそうな目だった。
ソラさんもソラさんだよ。
笑いながら兄さんを殴り飛ばしていた。
まるで、喧嘩を楽しんでいるようにしか見えなかった。
当時十歳だった私にとって、その殴り合いは過激すぎて、地獄を見ている気分だった。
悲鳴も上げられない。
目も逸らせない。
足がすくんで動かない。
決着が付くまで、ただその光景を漠然と見ていた。