GOLDEN WOLF〜ヤン暴君と最強honey〜
「じゃあね。『迅麓』十代目総長、加賀美煌月さん」
私は境界線を越え、脇目も振らずに必死に走る。
「茉麗!!」
…――これは白昼夢。
きっと、声を張り上げて私の名を呼ぶこの煌月の声も、今日一日の出来事全て白昼夢。
明日になれば、平穏な一日に戻っている筈。
だが、それはこの現場を東区のアイツらに目撃されていなければの話。
……てか、私は“アイツ”じゃないし。
“アイツ”と違って、私は真面目ちゃん。
そう、完璧主義者。
もう二度と、不良と『迅麓』には関わらない。
もう二度と、“アイツ”との約束は破らない。
私は強く下唇を噛み締めながら、ひたすら走った。