手紙でXXXして。



唯一、頭の騒音が鳴りやむ瞬間が、美術の時間だった。



カンバスに紙を貼り、真っ白な紙に向かう時だけ、あたしは事故前の【私】を取り戻せた気がした。

事故後、一度だけ定期検査で医者に診てもらう機会があった。


「何かお変わりがありませんか?」



どうして、あたしはあの時、何も言えなかったんだろう?

過去の想いがくらくらと頭を駆け巡って、あたしは実のベットの上によろよろと倒れこんだ。



< 103 / 214 >

この作品をシェア

pagetop