手紙でXXXして。
「全国ツアーでも、海外ツアーでも、お前なんかどこにでもいっちまえっ!!!」

鋭い怒鳴り声が、どこからともなく聞こえてきた。

ベンチの近くにある、病院のそばの公園から実と同い年くらいの少年が、あたしたちの前を駆け抜けていった。

一瞬だけ顔が見える。

「あれがうわさの、裕介くん。相変わらず足、はやいねぇ~」

そういえば病室で一度見たことがあるような気がする。

実とは違う、日に焼けた健康的な体をした少年。


実も昔はそんな感じだったのかな…。




実が青空の下で走る姿を思い浮かべてみた。

けど、浮かぶのは、筆を口にくわえ、真剣な表情で真っ白なカンバスを見つめる実の姿だった。


あたしは唐突に走りだし、裕介と呼ばれる少年のあとを追っ掛けた。


彼から実のことを聞きたいと、そう、思ったんだ。
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