手紙でXXXして。
「さてね。最後に会ったのはずいぶん前だから。ただ、ふゆかちゃんの目がさ」

「目?」

「うん、最初会った時さ思ったんだよ。すごくあの子の目と似てるなって」

あたしはもうなにも口にできなくて、ただ部屋の窓に目を向けた。白い雲がしらんふりして青空にぷかりと浮かんでいる。


「へんな話しちゃったね。ちょっと、お茶でもしようか?」


木村先生はゆったりとした動きであたしの手をとり、扉を開けた。


先生の指から、実との間と感じたむせるような熱とは違う、やさしい熱がそこにあった。



その熱に導かれて、あたしは知らない世界へ連れ出されていく気がした。

それはたぶん、あたしが長い間忘れていた世界。

身近すぎて、遠すぎて、

感じないようにしていた、人と人の交わる世界。
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