君に落ちた奇跡
「もういいぞ…」

手をはなして辺りを見渡す。

ここなら人が多くて奴らは仕掛けてこれない。

「あの、谷さんは…」

「あいつは大丈夫だ」

「でも…迷子に…」

「あいつは、引き付けるのが役目。引き付けるだけ引き付けて、あとは全速力で逃げる…
落ち着いた所で連絡をとって俺が迎えに行くから心配いらない」

近くの自販機でスポーツ飲料を2本買って、1本を渡す。

「…ありがとうございます。……谷さん、追い付かれませんか?」

「アイツは俺の倍速い…陸上の長距離がアイツの得意種目だ…」

谷は長距離走が得意だ。

けど、アイツは方向音痴。

マラソンをしても迷子になり、記録がでない…。

「アイツにも色々事情がある。俺にもな…」

何故だか谷のコトをきいてくるコイツに苛々する。

胸が苦しくなる。

この気持ちは…知りたくない…
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