君に落ちた奇跡
~・~・~


手が異様に冷たく感じる…

触れ合っていたのはわずかな時間なのに、身体の一部が失くなったような感覚…


―ブッブブ、ブッブブ…

ケータイが鳴っているのに気付いて、慌てて取る。

『朝夜、どうかした?
これ、3回めなんだけどさ……』

電話口から聞こえた谷の声に、やっと我にかえる。

「…悪い…」

『別にいーけど…あ、ひかるちゃんは?』

谷が発したその名前をきいたとたん、凄く胸が痛んだ。

苦しい…

「…アイツは…戻った。…迎えが来てな…」

『朝夜…大丈夫?』

谷の声は本当に心配してくれていて…

「何にたいしての大丈夫なんだ?……それより、今何処なんだよ…」

出来るだけそっけなく、いつも通りにしたつもり

けど、本当につもりだったらしい…

『ほんと、朝夜は意地っ張りだなぁ~
直接じゃないと素直にさせれないから早く迎えに来てよ。今ね、交番の前だから…』

明るい谷の声についつい笑ってしまう。

「お前、交番って…」

『もし、追い付かれても手だし出来ない場所でしょ?…それより早く来てよ!ここ、居心地最悪だからさぁ~』

「それは、日頃の行いが悪いからだろう?
まぁ、急いで迎えに行くから、大人しく待ってろ」

『は~い』

電話を切ると谷の元へ向かった。

この思いを忘れる為に
< 20 / 26 >

この作品をシェア

pagetop