エンジェルティアーズ
「あなたは何の仕事をしてるの?」


「俺は…小さな出版社で書き物をしている。でも、売れてないから、編集も手伝っている。週に一度の休み、それ以外はほとんど会社にいる。眠る時間もないぐらい。特に締切前になるとね。」



「へぇ~。すごい。」



「君は学生?社会人?」



「一ヶ月前まで…学生だったかな。うーん、今は休学。たぶん辞めるかな。」



「合わなかった?」


「いや。うーん…」


「言いたくない?」


「親が亡くなったの。育てのね。私、孤児だから。それで、その時、弟がいる事を知って…行方を追ってたの。会いたくて…」


「うん。見つかった?」


「いや。それで、助けてくれそうな人を友人から紹介されて…んで、弟の場所が見つかるかもって、車に乗ったら…」


咲は泣き出しそうだった。

修は力強く抱きしめた。


「君は騙された。そして、放り出された?」


「そう騙された。そして、襲われそうになり、必死で抵抗した。
挙げ句の果てに馬鹿にされた。親に捨てられたとか…」


「君には立派な両親が居たんだろ?育ててくれたとは言ってももうそれ以上になってるだろ?」


「…そう。最高の両親だった。でも、弟は…。」


「君の両親だって、子供を育てるのは初めてだったんだろ?いきなり二人もって難しくないと思わない?」


「わかってる…」
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