夢幻の都
ソニアが弾かれたように顔を上げた。
「嘘……本気?」
「馬から荷物を下ろして先に部屋に行くぞ、ソニア」
「え……うん!」
――いつもこのくらい素直だといいんだがな
ランダーは心の中でつぶやいた。
ソニアが何を期待しているかは容易に想像がついたが、知らぬふりを決め込むことにした。
「裏に厩があります」
宿屋の娘が言った。
「弟に世話をさせますね――パット、仕事よ!」
奥から小柄な少年が顔を出した。
もじゃもじゃの黒髪で、石炭のような輝く目の――どう見てもベルー族の少年だった。
「あら、あなたベルーなのね」
ソニアが弾んだ声で言った。