夢幻の都
少年は微かにうなずいた。
「お客さんもだね。僕はこの宿屋の養い子だよ。それがききたかったんでしょ?」
「パット! すみません、お客様」
姉娘が謝る。
「いいのよ。本当の事だもの」
「お客さんは歌姫?」
少年はソニアをまじまじと見て言う。
「そうよ」
「じゃあ歌ってくれる?」
「後でな、坊主」
寡黙なランダーが珍しく口を挟んだ。
「歌姫は疲れている。少し休ませてやってくれ」
「後でだね?」
少年は真剣な眼差しで言った。
「ああ。まずは馬の世話を頼む」