夢幻の都
宿の中に戻ると、さっきの姉娘が二階の部屋まで案内してくれた。
部屋は清潔だったが、大きな寝台が一つと小さなテーブルと椅子が二脚あるだけの殺風景なものだった。
壁際で小さく燃えている暖炉の火がかろうじて居心地のよさをかもしだしている。
「火を大きくしましょうか?」
娘が言った。
「自分でやる。少し休むので邪魔をしないでいてくれるか?」
「分かりました。ではごゆっくり」
「ああ、待て。ちょっときくが、今日は祭りか何かなのか?」
「ええ、明日は太守様のお誕生日なんですよ」
「ほう」
「今夜と明日は城邑をあげてお祝いするんです」
「なるほど。時にこの城邑の名は? 前の宿場でききそびれてな」
「ここはキースです」