夢幻の都
きぬ擦れの音が止んだ。
ランダーは寝台に戻ると、腰掛けて長靴を履いた。
「時々、地上に現れた城邑に迷い込む者がいる。そこには今も黄金が眠っていて、欲を出して手を出した者は戻れなくなる」
ソニアはランダーの横に並んで腰掛けた。
「手を出さない者は?」
「さあな。手を出さなかった奴の事は言っていなかった。手を出さない奴なんているのか?」
「皮肉屋ね」
ソニアは笑った。
「あたし達は出さないわ」
「そうだな」
ランダーは、手櫛で無造作に燃えるような赤毛をすいた。
「『約束された者』が現れてこの世の終わりを告げるまで、城邑は安らぐ事はない。呪われし黄金の城邑、その名をキースという」
「あら、まあ」