夢幻の都
ソニアはしばし目を閉じた。
「ここは幻のようなものでできている場所ね」
「幻は掴めないものだと思っていたが?」
ランダーは寝台を叩いてみせた。
「誰か力のある者が魔法をかければこうなるわ。もしくはこの土地自体に魔力があるのかも」
「またこの大陸の古い神々か?」
ソニアは目を閉じたまま鼻歌のようなものを歌い、体を揺らした。
「違うみたい」
「お前の歌で呪いを解けるか?」
「そうね、やってみましょう。少なくともこの城邑から出るくらいはできるわ」
ランダーが疑わしげに眉を上げると、ソニアは肘で彼の脇腹を小突いた。
「あたしを誰だと思っているの? ベルーの最高位の歌姫、<黒の歌姫>なんですからね」