夢幻の都
ランダーとソニアが階下に降りて行くと、パットが近寄ってきた。
「歌ってくれるの?」
少年が期待に満ちた声できく。
「歌うわ」
ソニアが答えるとパットは、ポケットから取り出した物をソニアに差し出した。
「あたしに?」
パットが頷く。
「母さん――僕の本当の母さんから預かった。いつか<歌姫>に会ったら渡してくれって」
それは黄金でできた巻き貝の殻のような物だった。
「耳に当てて。歌が聞こえるはずなんだ。僕は男の子だから聞けないけど」
「聞こえるわ――あなたのお母さんは<歌姫>だったのね」