夢幻の都

ランダーとソニアが階下に降りて行くと、パットが近寄ってきた。


「歌ってくれるの?」

少年が期待に満ちた声できく。


「歌うわ」


ソニアが答えるとパットは、ポケットから取り出した物をソニアに差し出した。


「あたしに?」


パットが頷く。


「母さん――僕の本当の母さんから預かった。いつか<歌姫>に会ったら渡してくれって」


それは黄金でできた巻き貝の殻のような物だった。


「耳に当てて。歌が聞こえるはずなんだ。僕は男の子だから聞けないけど」


「聞こえるわ――あなたのお母さんは<歌姫>だったのね」

< 25 / 34 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop