夢幻の都
「屋根よ」
ソニアは振り向きもせず言った。
「崖じゃないのか……?」
ランダーはつぶやいた。
「聞こえたわよ、ランダー。あたしの直感を信じてないのね。当たるのに」
「お前の才能はよく分かっている。だが、その直感とやらのおかげで、必ずと言っていいほど災難に巻き込まれてきたじゃないか
「失礼ね!」
「お前の言う〈屋根〉が、竜の棲み家じゃないことを願うよ」
「竜なんて、この大陸にはいないわよ」
「それじゃ、熊だ」
ソニアは、鼻先でせせら笑った。
「竜がいようと、熊がいようとかまわないわ。この霧の中でじっとしているよりはましよ」