夢幻の都
ソニアは歌い終えて人々を見た。
きらびやかな服に身を包んだ男が前に出てくる。
ランダーが剣を構える。
「あなたがキースの太守?」
ソニアは小首を傾げて尋ねた。
「そうだ」
「あたしはソニア。ベルーの最後の<歌姫>、<黒の歌姫>よ」
「歌をやめろ」
「できないわ。あなたに殺された<青の歌姫>はもう一曲、歌を残している。それを歌うのがあたしの定め」
太守は雄たけびを上げてソニアに斬りかかって来た。
一瞬早く、ランダーが太守の手首を払う。
太守の剣が空を飛び、手首から血が流れた。
「その血は幻」
ソニアが言った。
「朝が来ればまた無傷に戻る。あなた達は同じ一日を延々と繰り返しているのよ。幻の中に魂を閉じ込められている」