夢幻の都

気付けば、朝もやの廃墟の間にランダーとソニアはいた。


ずっと離れたところで、馬が二頭、草を食んでいる。


あたりには人の気配ひとつなかった。


「俺達は元に戻れたのか?」

ランダーは剣を鞘に納めながら、つぶやくように言った。


「みたいね」

ソニアは七弦琴を革袋にしまうと両手を上げて大きく伸びをした。

「ランダーの言うことをきいて休んでおいてよかった! またしばらく行かないと次の宿場までたどり着けないわよね」


「たぶんな」


ランダーは手を差し出してソニアを立ちあがらせた。


「やっぱりお前の直感はあてにならないって分かったよ」


「ひどいわ」


ソニアは笑いながらランダーに抱きついた。


「せっかく歌で救ってあげたのに」

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