夢幻の都
――そうだろうとも。
ランダーは腰にさげた長剣の柄にふれながら、心の中でぼやいた。
――この剣で竜や熊をやっつけるのは、お前じゃなくて俺だからな……
「本当にひどい霧ね。体の芯まで湿ってしまいそう」
「南部のようにはいかない。もう少し寒くなれば、雪だって降る」
「最低ね……」
ソニアはうめくように言った。
「だから俺についてくるなと言っただろう? あのまま、カディスにいればよかったのだ」
「あたしを追っ払おうとしてもだめよ」
ソニアはクスクスと笑った。
「ランダーも一緒に南部に戻るなら、最高なのにな」
「俺にとっては最低だ」
「どうせ、そうでしょうよ。でもね、ランダー……」