夢幻の都
ソニアが何を言いかけたにしろ、その言葉は飲み込まれてしまった。
代わりに彼女の唇からもれたのは、感嘆のため息だった。
「ソニア、どうした?」
「見てよ……」
「何を?」
「よく見て。ほら、これ石の壁よ。城邑の外壁だわ。街があるのよ」
ランダーはソニアの横に立った。
確かにソニアが触れているのは、灰色の石壁だった。
「霧が見せる幻覚じゃないだろうな?」
「蜃気楼みたいな? 違うわ。本当に触れているもの。本物よ」
「このあたりに城邑があるなんて、今まで過ぎてきた街では聞かなかったが……」
「言い忘れたんじゃないの?」
ソニアは明るく言った。