ONESTAR
おふくろはきれいな顔をくしゃくしゃにして、キッチンのドアに手をかけたまま、泣いている。

昔みたいに、背中から抱きしめれば、この女は言うのだろうか。

「がんばろうね、ヨシアキ。お母さんもがんばるからね。」と。

そうすれば、私生児だと陰口を叩かれる事も、

遠足にコンビニの弁当を持っていってからかわれる事も、

流行のゲームを買ってもらえない事も我慢できたのに。

「……あたしは……妻の座を手に入れる代わりに……一番大事なあんたをなくしたのね……」

お袋が俺を見上げ、そうしてドアから手を離した。
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