ONESTAR
親父が帰って来る頃にはきちんと化粧を直し、いつものように幸せな妻を演じるのだろう。

俺たちがここに来たあの日から、

歯車が狂ったまま、どうにもならないこの場所で。


部屋に戻ると、店長がまだ窓の外を見てた。

俺に気づくと振り向いて「どした?」と聞いた。

「え?」

どうもしないと言いかけて、さっきのが聞こえてたんだと悟る。

「……別に。ベンキョーしよーよ。」

泣いてない。

俺は、

泣いてなんてない。

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