ONESTAR
力任せにTシャツを引っ張ったせいでナツキの薄い身体がTシャツの下から覗いた。

背骨が目立つ痩せた背中一面に、まるで子供が書いたイタズラ書きのバッテンのような傷跡が見えた。

うっすらと白くXの形に盛り上がった傷跡は、明らかに刃物傷だった。

これって。

「………何。」

言葉を失った俺から、Tシャツの裾を取り返したナツキは、腰に手をあて俺を見てる。

「あ、あの、一緒に行ってもいい?」

「…………いいけど。」

渋々ナツキは納得し、駅に向かい歩き出した。

俺は慌てて後を追う。
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