ONESTAR
俺のデニムのポケットには、有り金全部とパクって来た親父のキャッシュカードまで入ってるってのに。

何だって俺は、こんなところで泣いてるんだ?

「よしよし。」

ナツキが俺の頭を撫でる。

見下ろされたのなんて久しぶりだ。

たいがい俺よりデカいヤツなんていないし。

「ヨッちゃんさー、俺、ハンカチとか持ってないんだよねー。いっつも店長に持ってけって言われてるんだけどさー。」

困ったように俺の頭を撫でるナツキにしがみつく。

さっきまで、どうにかして消そうとしてた男に。

貧相な身体。何食って生きてんだろ。

「俺……何の役にも立たな……」

何の役にも立たない。
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