ONESTAR
ガタン!!

と言う音で、クラスの大半が俺の方を振り返った。

勢いよく立ち上がった拍子に倒れた椅子を戻し、カバンを肩にかけ、出口に向かう。

ちらりと目線をくれたイチムラが、その薄い唇を声を出さずに動かした。

「え、い、が」と読み取れた唇の動きに、「恋の季節」を観ろとリホコに言ったのはこいつだと悟る。

「イチムラ、俺、風邪ひいたから帰る。」

「……リホちゃんにはそう言っとく。」
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