翔る。



この刀、本物だろうか?




あまりにも男が詰め寄ってくるからつい払ってしまいたくなる



そんな気持ちを抑えて、そっと喉にあてられるモノに触れた。



数秒後に私の手のひらから肘へと伝う水。


血、だ。




背中に冷たい空気が駆け巡る。



そして刀を持つ男の後ろにいた人が馬から降りた。


刀の男よりも少し背が低い。


兜の影から覗いて見える薄めの唇に、通りのよい鼻、


そして吸い込まれてしまいそうな右目。


左目は眼帯で隠れていた。






「やめろ。今、血は見たくない」




そう言われた男はゆっくりと刀を持つ手を下ろした。




刀が下ろされたことによって溶けた緊張。
ほっと胸をなで下ろす。








< 19 / 85 >

この作品をシェア

pagetop