追憶の蓋
夜風で乾いた涙をなぞり

ひとつだけため息を吐いた


ひとしきり泣いて

冷たくなった頬も


冷え切った体も

手の中の汁粉缶も


心の温度にはかなわない


もし怠慢な秋の太陽が

きまぐれに温めてくれたとしても


記憶のふたを壊してしまった

今のあたしには

頼りない40ワットの豆球程度
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