ジャック ザ リッパー



「きれいな声だなあ」



彼は唐突に喋った。

男からは表情が窺い知れないが、どこか状況に似合わない胸騒ぎがする。



きれい、だなぁ。


月にでも言うかのように。



「ああ、さっきの?
うん僕もすごく綺麗な声してると思うよ」



「きれいだなぁ」



「そうだね」



子供をあしらうかのように、男は優しく、でも簡単な返答をした。


無線機の奥の声が綺麗だとか、そんなことはどうでもいい。




< 14 / 40 >

この作品をシェア

pagetop