愛花

゛おじいちゃま…お父さんのこと…話してくれるの？″

゛あーやにも話しておいた方がいい頃かもしれない。あーやの父親は圭織の美術部の顧問をしていた。圭織は先生に恋をした。彼は美術コンクールに出品する絵のモデルを圭織に頼んできた。その絵がコンクールで賞を取ったら美術商のお嬢さんと結婚することになっていて、その絵は大賞を取ったそうだ。そして二人は結婚した。圭織は失恋したんだ。″

゛え？お父さんとお母さんはなぜ一緒になったの？お父さんにはお母さんじゃない奥さんがいたの？だから不倫なの…″

゛出会う順番が間違っていたんだ。″

祖父は遠くを見て言った。

゛圭織は…お母さんは諦めたはずだった。でもお父さんは…あの男は間違った結婚に気が付いて圭織を愛していった。圭織はその愛に答えてしまったんだ。″

゛そして私が産まれた。産まれてこなければ二人は死ななくてよかったのにね″

゛そんなことはないよ。あーやが産まれて二人は幸せだったんだ。お父さんも圭織とやり直すつもりで奥さんに別れ話を切り出して、彼女のプライドを傷つけたんだ。そして反撃されたんだ。″

゛それで？″

゛彼は絵を描けなくなった。手を傷つけられて、描けなくなったんだ。絵を取り上げられたんだ。圭織は彼を放り出せなくてついていったんだ。″