愛花
゛お母さんは私じゃなく、お父さんを選んだのね。私は捨てられたの…″

゛そうじゃない。圭織は私たちにあーやを託していったんだ。おまえは捨てられたんじゃなく預けられたんだよ。私たちにね。″

゛私は今まで寂しいなんて思ったことなかった。これが私の家族だって思ってたし…″

゛私たちだって圭織を亡くしてぽっかり空いた穴をふさいでくれたのはあーやだよ。おまえの笑顔に仕草にどれだけ慰められたことだろう。それだけにおまえを圭織の二の舞にならないようにおばあさんは厳しくしてしまったんだ。″

゛おばあちゃんは怖かった。けど嫌いじゃない。居ないときは寂しかった。私が絵を描くことに悩んでいたんだろうね。お母さんを見ているみたいで…″

゛最初はね。今は楽しみにしてるみたいだよ。あーやの絵は心を清らかにしてくれるって言っていたよ。あーやから絵を取り上げなくてよかった…って言っていたよ。″

゛…私のお父さんの名前は?…″

゛平岡和哉…″

゛………和哉…………藍野さんのお姉さんの子?″

゛知っているのか?死んでしまった後遺体を引き取りに来られたんだよ。藍野さんはおまえのことを知っているようだったかい?″

゛…わからない…お父さんの絵を見たわ。優しく抱き締められるようだった。″
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