愛花
新しい環境に慣れるのが苦手だった。

自分から話し掛けることもなく授業に出ていたのでいつも一人だった。

昔から変わらない私だった。

ただ授業は好きなことばかりで楽しかった。

ゼミの先生も年配の落ち着いた感じの方で懐かしいところがあった。

シスターに似てる…

そう思った。

油絵をはじめることにした。

父の足跡を追い掛けてみようと思った。

母が命懸けで愛した人だから、私がその血をどれだけ受け継いでいるのかを知りたかった。

゛油絵が初めてなんて…美大によく入れたね!″

笑われてしまった。

でも平気。

祖母には手紙を書いた。

日記のように書こうと思った。

いつも家で話していたように…

返事はたぶん来ない。

祖母は体を癒してもらって1日でも長く生きてほしかったから…

祖母は別れ際に私を抱き締めて言った。

゛これでお別れです。私からは連絡はしません。何があっても…しません。でもアヤが耐え切れなくなって死んでしまいたい、と思ったときは会いに来なさい。一人で逝ってはだめよ。″

そして私たちは別れた。


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