黒騎姫―Princess of black knight
第一章 Ⅲ
真夜中の森。
あたしは一人、空間転移の魔法で降り立った。
辺りに人の気配がないことを確かめてから、魔法の指輪を一振りする。
指輪から黒い騎馬が出現した。
「黒香(くろか)、ひさしぶりだね」
黒香は魔法の召喚獣だけど、あたしにとっては大事な愛馬。
鼻をなでてやると黒香は目を細めた。
「さあ、行くよ」
あたしは黒香へひらりと騎乗して、人馬一体、駆けだした。
しばらく走ると、目的の場所――アルバードの領地の村へ着いた。
あたしは酒場の裏手へまわった。
勝手知ったる、隠し扉の場所。