黒騎姫―Princess of black knight

 口調にはこだわるけど、答えはどうでもいい。

 斬れる間合いまで、気づかれずに距離を詰めるための会話だから。

 魔王だろうと女神だろうと、ね。

 氷の女はあたしの問いを無視して、勝手に話を続ける。

「雷は天空神の光の矢。黒乃魔力は魔王の力の源泉。相反する力を消滅させず融合させ、しかも剣一本に込めるとは。大したものだ」

 氷の女は淡々と言った。

 まあ、褒められたようで悪い気はしない。

 でも、おだてられもしないし、油断する気もない。

「火と水を混ぜればお湯になるでしょう?」

「なるほど、面白いことを言う。……だが」

 氷の女は近付いてきて、あたしの剣の間合いぎりぎりでぴたっと止まった。
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