黒騎姫―Princess of black knight

 不思議なものよね、人って。

 はぁ~。

 仕方ないなぁ。

 あたしは一人、洞窟の中へ入った。

 オルトロスの赤ちゃんの前で、魔法を二つ、素早く唱える。

 激しい雷鳴が轟き、赤ちゃんがいたあたりを真っ黒に焦がした。

 もちろん、赤ちゃんの姿は見当たらない。

 アルバードたちが驚いて洞窟の中へ駆け込んでくる。

 焼け焦げた地面を、無言で見つめた。

「さあ、帰りましょう」

 あたしの表情は仮面で隠れている。

 彼らには仮面の内側を知りようもない。

 これでいいのよ。
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