僕は
 そんな場所に行くことはまずない。


 ホントなら六本木か南青山辺りで食事を取れればいいのだが、肝心の時間がなかった。


 お金なら相当潤沢にあるのだが、いざそういった場所に行けば、長居してしまうことが多い。


 弁護士でも法律事務所に籍を置く人間は、食事休憩以外はずっと事務所に詰めっぱなしだ。


 まあ、僕も東京拘置所に接見に行くことはあったのだが……。


 原則事務所の個室内に詰め続けている。


 特に須山は木崎朱莉の第一審結審後、対抗する能島検事が即日控訴してきたので、やり返すのを目標にしていた。


 弁護人は国選・私選問わず、犯罪の嫌疑が掛けられた人間なら誰にでも付く。


 最近、警察もいい加減な捜査をすることが多かった。


 不当逮捕や誤認逮捕、それに警察内部での不祥事などが絶えることはない。


 そうやって警官の誤った判断で犯人に仕立て上げられた人間たちを弁護し、心身両面の苦痛を和らげてあげるのが僕たち弁護士の役割だ。
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