僕は
 一礼すると、須山が高裁前で手を挙げてタクシーを一台拾い、乗り込む。


 それをずっと見つめていた。


 すると江美が傍に来て、


「いつかは敬一も須山先生みたいな弁護が出来るといいわね」


 と言う。


「ああ。しっかりやるよ」


「期待してる」


 僕たちも須山のタクシーを追うようにして、通りでタクシーを拾い、新宿の事務所まで走らせた。


 事務所に戻ったら、また資料の読み込みをやる。


 今回の事件で須山を手伝わないといけない。


 地味なのだが、僕の仕事はそういったことである。


 一日目が開けられないぐらい痛くなるまで、資料を読む。

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