僕は
 エレベーターに乗って上階へと上がりながら、江美が呟くように言った。


「……もう冬ね」


 確かに新宿の街も冬枯れている。


 あちこちで街路樹から落ちた葉が散らかり、色付いていた。


 紅葉の季節の前に寒さが増し、葉が残らず落ちてしまったのだろう。


 僕の目にもそれが見えていた。


 だけど言えるのは、そういったものを見るたびに冬の訪れが感じられるということだ。


 十二月に入ればそういった葉も全部なくなってしまい、寒さが急速に増すものと思われた。


 もう冬が来ている。


 秋という季節があっという間に終わってしまって。
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