僕は
 確かにあっちの弁護士事務所は学閥などの関係で、啓徳大法学部出身の弁護士が多い。


 私立大学でも啓徳大は特に偏差値が高いので、優秀な人間が大勢いる。


 さすがに弁護士たちも日弁連の会合などがあれば、定期的に出てきて、情報交換などをし合っていた。


 僕も将来的には刑法の畑で須山のように優れた弁護人になりたいと思っている。


 そのためにはまだまだ法律に関して勉強が必要だ。


 日々関係資料を読み込んでいた。


 合間にキーを叩きながら随時必要なものを作って、上の人間に提出する。


 その日は控訴審の第一回証人調べが終わった後だったので、仲間内でもとりわけ真新しい話は出ない。


 単に法廷で須山が輝いていたことを噂し合う女性弁護士がいるぐらいで、須山も自室で引き続き資料を読んでいたし、僕も残務をこなしていた。


 午後七時に出前のラーメンが来た。


 僕も須山も各々自室から出てきて、鉢合わせになったので僕の方が一礼する。

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