僕は
初めて聞く話だった。
これを知るのはこの事務所内では高階ら中堅の弁護士だけで、僕や江美などイソ弁は知らない。
それに僕も今日聞いて初めて知った。
須山がずっと現役の弁護士として頑張ってきているのは、空の彼方にいる亡き奥さんと娘さんに対し捧(ささ)げる意味で、だったのだ。
話を聞きながら、泣いてしまった。
「おいおい、園岡。君が泣いてどうする?これはあくまで俺の個人的なことだ。弁護人としての職責を果たしてるってことを、ちゃんと妻や娘の墓前に報告してるんだよ。祥月命日(しょうつきめいにち)になるとね」
「そんなことを抱え込まれてたんですか?」
「ああ。ホントなら君みたいな若手には話さずに、墓にまで持っていくつもりだった。でも俺も弁護士である前に一人の人間だ。ちゃんと毎年九月十九日に墓前に行って報告してるよ。『お父さんは頑張ってるんだよ』とね」
そのとき初めて分かった気がした。
須山がチェーンを付けて常に首から提げている、結婚指輪らしいリングの意味が。
これを知るのはこの事務所内では高階ら中堅の弁護士だけで、僕や江美などイソ弁は知らない。
それに僕も今日聞いて初めて知った。
須山がずっと現役の弁護士として頑張ってきているのは、空の彼方にいる亡き奥さんと娘さんに対し捧(ささ)げる意味で、だったのだ。
話を聞きながら、泣いてしまった。
「おいおい、園岡。君が泣いてどうする?これはあくまで俺の個人的なことだ。弁護人としての職責を果たしてるってことを、ちゃんと妻や娘の墓前に報告してるんだよ。祥月命日(しょうつきめいにち)になるとね」
「そんなことを抱え込まれてたんですか?」
「ああ。ホントなら君みたいな若手には話さずに、墓にまで持っていくつもりだった。でも俺も弁護士である前に一人の人間だ。ちゃんと毎年九月十九日に墓前に行って報告してるよ。『お父さんは頑張ってるんだよ』とね」
そのとき初めて分かった気がした。
須山がチェーンを付けて常に首から提げている、結婚指輪らしいリングの意味が。