僕は
 このまままた事務所に戻るつもりらしい。


 僕も江美も別のタクシーに乗り、須山の車の後を追った。


 さすがに法廷で遣り合うのは疲れるだろう。


 だけど須山の横顔はやはり自信に満ちている。


 イソ弁に過ぎない僕たちが言うのもなんだが、今日の判決は永遠に歴史に残るものと思われた。


 それだけ貴重ということだ。


 そしてこういった冤罪事件の弁護の依頼がこれから先、山ほど寄せられることも予想される。


 つまり事務所にとって単なる第一歩に過ぎないということである。


 これからこの手の案件をクライアントから引き受けることは当然考えられた。


 僕も気を入れ直してやるつもりでいる。


 初心に戻って。


 無実の人を助けたいと願い、弁護士を志望したのが司法試験合格直後の想いだったのだ
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