僕は
から……。


 あれからもう十年以上が経っている。


 まだ単なるお手伝いなのだが、弁護人としての人生はこれからも長い。


 それに僕自身、江美とは単なる女友達というものを超えて、一緒になれる日が来ると思っていた。


 今は給料を貯金しながら、晴れがましい未来を待つつもりだ。


 全てはこれから始まっていく。


 事務所に着くと、須山の部屋は電気が付いていた。


「お疲れ様です」


 後で着いた僕たちがそう言うと、須山が扉越しに、


「園岡、さっき言ったことをする前に美津濃君を送っていきなさい。女性は夜道を一人で歩いたりすると危ないからね」


 と言って、僕に江美を送っていくよう促す。


 高階も珍しく先に帰っていたし、居残っている女性弁護士は江美だけだ。
< 125 / 359 >

この作品をシェア

pagetop