僕は
 ずっとコーヒーを口にしながら、裁判記録を読み続けていると、ドアがノックされた。


「はい」


 応答する。


「あ、おはよう。あたし。江美」


「ああ。今開けるよ」


 立ち上がり、扉を引き開けた。


 江美が立っている。


「泊り込んだの?」


「うん。……あ、髭剃ってなかった」


「そう思って買ってきた」


 彼女がT字の髭剃りの入ったビニールの袋を差し出す。


 中には僕がいつも使っているスタイリング剤も入っていた。


 きっと知っているのだろう。
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