僕は
 と訊いてきた。


「あの彼女と申されますと?」


「美津濃君だよ。彼女と君は付き合ってるのかな?」


「ええ、一応」


「恋愛もたくさんしろよ。俺みたいに妻と娘をいっぺんに亡くしちゃう人間もいるからな」


「お辛さは察します」


 須山は妻と娘が大型車に轢かれ、交通事故で死亡したことを思い出したのか、グッと堪えていた状態から目に涙が溢れ出てきた。


 ハンカチを取り出し、


「すまない。個人的な感傷に陥ってしまって」


 と言う。


「構いませんよ。須山先生だって人間なんですから。お辛さは分かります」


「君はあの子を大事にしなさい。きっと弁護士という仕事以外でも力を発揮できる人間だろうと思うから」
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