僕は
 その言葉を聞いて思った。


 須山は僕と江美がいずれ結婚すると思っているのだ。


 さすがに僕も弁護士業務に慣れてきたばかりなので、オフの時間とはいえ、結婚の話などをされるとどうしようもなくなる。


「確か、君、実家九州だったよね?」


「ええ。……それが何か?」


「今度休みが取れたらあっちの方に旅行に行こうって思ってて」


「九州に……ですか?」


「ああ。君は博多知ってるんだろ?一通りは」


「ええ、一応」


「君の実家にも行って見たいしな」


「県の外れですよ。大分県の方に近いところなんですから」


「いいじゃないか。そういったところに旅行に行きたいんだよ。この東京の空気なんかいつも吸ってれば慣れるけど、あまりいい気持ちはしないからな。ここ新宿は何でも揃って
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