僕は
 風邪を引いたり、胃腸が悪かったりしても、通常通り業務を行なう。
 

 その日も朝から気付けのコーヒーを一杯飲み、仕事をし始めた。


 振り返ってみると、今年は実に忙しい一年だったなと思う。


 メインは木崎の弁護だった。


 須山にサブとして付き、共に働くことで、自分なりに専門の刑法に関してもう一度勉強し直せたと思えている。


 木崎は先日、事務所に挨拶に来ていた。


 須山と一緒に応対し、


「もう二度とあんな事件に巻き込まれないようにね」


 と須山が言うと、木崎が涙ながらに何度も頭を下げる。


 僕も脇にいて思った。


 須山の弁護士としての偉大さと、それに加えて、人間としての器の大きさを。


 それが須山の株が上がる一番の理由だと思う。

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