僕は
ロで書類作ってたし」


「失礼を承知で申し上げますが、先生は奥様と娘さんを亡くされるまでは、高階先生と仲がよかったんじゃ?」


「おいおい、変なこと聞くなよ。俺だって忙しい仕事の合間を縫って、娘の幼稚園のお遊戯会とか授業参観に行ってたんだぞ。それに妻のこともずっと愛してた。自分で言うのもなんだけど愛妻家だったよ」


「お辛いですね」


「まあ、終わったことだからな。今更どうこう言っても妻も娘も帰ってこないんだし」


「じゃあ、これ食べたらまた仕事します」


 そう言って、大きい方のチャーシュー麺の器を手に取った。


 須山が小さい方のラーメンの容器を持ち、自分の個室へと向かう。


 何があっても、須山は過去を忘れられないらしい。


 それだけ思いが強いということだ。


 確かに僕も順当に行けば、いずれ結婚すると思う。

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