僕は
 彼女がそう言って熱燗で付けてもらっていた日本酒を飲みながら、ほろ酔う。


 そして、


「寺田さん殺害の実行犯と目される篠岡幸子と中邑靖志の二人の裁判は今現在係争中よ。東京地裁で第一審の真っ最中って聞いたわ。第一回の証人調べも終わったみたいだし」


 と言った。


「でも裁判って恐ろしいよね。特に刑事裁判は。俺も容疑者の接見に行ったりしてるけど、明らかにクロって人間の弁護もしないといけないからな」


「そりゃそうよ。誰だって被告人の段階じゃ、まだ罪に問われないんだから」


「君は商法が専門だけど、高階先生から叩き込まれてるんだろ?いろんなことを」


「ええ。でも高階先生はずっと資料ばかり読んでおられるから、接触する時間は一日に一、二時間程度ね」


「俺も須山先生とはそんなに接触することがないよ。部屋が隣だけど、別にこれと言って話すことないし」


「敬一もほとんど独学でしょ?法律に関しては」


「ああ。司法試験の勉強のときに仕入れた知識ももちろんあるけど、司法修習の段階で覚
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