僕は
えたことの方が圧倒して多いからな」


「あたしも刑法は一通り知ってるけど、さすがに敬一とか須山先生みたいに専門にしてるわけじゃないし、単に知識としてあるだけよ」


「そう?……まあ、俺が君の専門の商法を詳しく知らないのと同じだね。<餅は餅屋>って言葉があるぐらいだし」


「そうよ。事務所にいても違う仕事してることに変わりはないんだから」


「今夜は飲むか?」


「ええ」


 江美が頷き、お酒の入ったグラスに口を付ける。


 互いにずっと一緒の場所に勤務しているのだし、気心は知れ渡っていた。


「もうすぐクリスマスね」


「ああ。雪が降ればホワイトクリスマスだな」


「ええ。今から楽しみね」


 彼女が頷くと、付けている香水の香りが漂ってくる。
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